桜十字グループでは、「生きるを満たす。」という考えや「WELL-BEING FRONTIER」というビジョンのもと、医療空間そのものの在り方にも向き合っています。その一環として、小山薫堂氏のアイデアをもとに、それぞれの施設が持つ想いや土地の記憶を空間デザインへと落とし込んできました。
今回ご紹介するのは、桜十字グループの出発点となった熊本市南区にある「桜十字病院」です。
人はいつも、何かを「まってる。」
病院には、たくさんの「まってる」があります。
診察を まってる。
家族や友人の訪問を まってる。
大切な人が元気になるのを まってる。
退院の日を まってる。
けれど、病院ですごす「まってる」は、ただ時間が過ぎるのを待つことだけではありません。
ひとは、うれしいことも、切ないことも、いつも何かを待ちながら生きています。そんな「待つ」という時間に目を向けたのが、桜十字病院の「まってるラウンジ」です。
この空間の発想のもとになったのは、小山薫堂氏が大切にしている一冊の絵本「まってる。」でした。

ひとりの男の子が人生の中で出会う、さまざまな「まってる。」時間を切り取った物語です。
その絵本をモチーフに、小山氏が病院という場所を捉え直したとき、そこに見えてきたのが「大切なものに気づける場所」という姿でした。
体を悪くしたとき、初めて健康のありがたさに気づく。
家族や友人の想いに触れる。
一日一日の時間を大切に思う。
これからの人生について考えてみる。
病院は身体を治す場所であると同時に、普段は意識していなかった大切なものに気づき、新しい一歩を考える場所にもなれる。「まってるラウンジ」は、そんな考えを空間にした場所です。

エントランスを抜けると広がる「まってるロビー」には、丘を思わせる白いベンチと、円形のシャンデリア。天井には、ラウンジの中心から静かに広がっていく波紋のような意匠が施されています。

その先にある「まってるライブラリー」には、患者さまやお客さま、スタッフへのインタビューをもとに選ばれた、11のジャンルの本が並びます。

本を開けば、知らなかった世界に出会える。
昔好きだったものを思い出す。
一冊の本をきっかけに、明日が少し楽しみになることもあります。
左に進むと、手紙を書くための「レタールーム」。

家族や友人へ。
入院中の大切な人へ。
あるいは、退院する日の自分へ。
普段なら言葉にしない気持ちを手紙に書いてみる。書きながら、自分の気持ちに気づいたり、伝えたい人の顔を思い浮かべたり。言葉にすることで、心の中にあるものが少しずつ整理されていきます。
そして、家族や友人と一緒に過ごせる「シェアルーム」。
家族と記念日を祝ったり、友人を招いてゆっくり話をしたり。病院という場所にいながら、大切な人たちといつものように過ごせる、リビングのような空間です。

また、ラウンジにはカフェもつくられました。
絵本「まってる。」の最後に登場する「au fil de la vie…」という言葉から名づけられた「Filcafe(フィルカフェ)」です。「fil」はフランス語で「糸」を意味します。

ここで過ごす時間が日々の楽しみにつながってほしい。そんな願いが、空間の細部にも込められています。
「まってるラウンジ」で過ごす時間は、特別な時間ではありません
本を読む。
誰かと話す。
手紙を書く。
少しだけ立ち止まる。
そんな何気ない時間が、自分自身や大切な人に目を向けるきっかけになる。これからやってみたいことや、誰かに伝えたいことが見つかるかもしれません。「まってるラウンジ」が目指したのは、そんな時間を過ごせる場所でした。



身体がよくなっていくこと。
心地よく過ごせること。
大切な人とのつながりを感じること。
これからの未来を少しだけ思い描くこと。
その一つひとつが、人がよりよく生きていくための well-being な時間につながっています。

人はいつも、何かを「まってる。」
その時間のなかで、大切なものに気づくことがある。
病院で過ごす時間が、そんな気づきの時間になりますように。
そして、その気づきが、これからの日々へとつながっていきますように。
「まってるラウンジ」には、そんな願いが込められています。
※ 2024年、Filcafe(フィルカフェ)は VOLCAFE(ヴォルカフェ)に
まってるラウンジの誕生から時を経た現在、時代や病院を訪れる方々のニーズの変化に合わせて、フィルカフェは「VOLCAFE(ヴォルカフェ)」へと生まれ変わっています。プロバスケットボールチーム:熊本ヴォルターズをコンセプトに、スポーツを通じた人と人とのつながりや、健康で活気ある毎日を応援する場所として、新たな役割を担っています。
