不安な言葉が何度も浮かぶときに起きていること
「さっきの言い方、少しまずかったかも・・・」
「結局、あの選択は正解だったんだろうか・・・」
このように、不安な言葉が心の中で回り続ける経験はありませんか?
心の中で発せられる言葉は、心理学用語で “自分に向けられた言葉” = inner speech(内言)と示されます。
内言での会話(内的対話)は、ただの独り言ではありません。感情を整理し、行動を調整し、次の判断を助ける。いわば 心のセルフマネジメント機能 です。
内言には「型」がある?
内的対話にはいくつかの型があり、代表となるのは次の3型です。
【支援的(Supportive)】
支えてくれる相手を心に思い浮かべ、励ましやつながりを補うような対話。
→ 気持ちを落ち着かせ、立て直しを助ける会話
【対立的(Confronting)】
「良い自分」と「嫌いな自分」など、自分の中の二つの側面が言い争うような対話。
→ 迷いの正体を可視化できたり、行動を助ける会話
【反芻(はんすう)的(Ruminative)】
失敗を繰り返し思い返し、自分を責める/嫌な記憶をぐるぐる回すような対話。
→ 不安を増幅させ、同じ考えをループさせやすい、自分を振り回す会話
不安が強いときには、内的対話が「反芻的」に傾きやすく心の中で“結論の出ない会議”が開かれ続けている状態に陥りがちです。
だからこそ必要なのは、心の会話を気合いで止めることではなく、内的対話の型を知り、会話の進め方を変えることです。

「距離」を取ると、心の声は味方になりやすい
イジー・ゲインズバーグの研究では、 三人称(distanced) のセルフトークを用いた参加者は、一人称のセルフトークを用いた参加者と比べて、意思決定に差が出ることが報告されています。つまり、内言を 第三者視点 にすると、感情に巻き込まれにくくなり、判断が整いやすいことが示されています。
(例)
×「私は、どうすべきなの?」(感情と密着しやすく、反芻しがち)
○「あなたは、どうすべきだと思う?」(一歩引いて冷静になれる)
不安は、出来事そのものよりも「頭の中での語り方」によって強まることがあります。心の声の自分と距離を取ると、その声は“責める声”から“整理する声”へと変わりやすくなります。
不安に振り回されない、ウェルビーイングな「心の整え方」3つ
では、内言を 整理する声 として上手に扱うためには、どうしたらよいでしょうか?
次の3つのプロセスをご紹介します。ご自身がやりやすい方法から、試してみてくださいね。
① 書き出して、頭の中から外に出す
心の声をメモにそのまま書きましょう。ポイントは、きれいにまとめずに、正直に「吐き出す」こと。
→ 思考と距離ができ、反芻のループが切れやすくなります。
② 評価をやめて、実況に変える
「ダメだ」ではなく「今、不安が強い状態だ」「緊張が上がってる状況だ」
→ 自己批判が弱まり、落ち着きを取り戻しやすくなります。
③ 問いかけを第三者視点にする
「私は、どうしよう…」ではなく、「あなたなら、次の一手はどうしますか?」
→ 俯瞰が生まれ、判断の意識が妄想的から“現実的”に戻りやすくなります。

まとめ|心の声の癖を知って上手に付き合おう
内言は、無理に止めようとしたり、抑えたりするものではありません。陥りやすい癖を知り、会話の進行を整理するほど、自分を責める声ではなく、前に進むための声になっていきます。
不安に振り回される日はあって当然です。その日にできるのは、心の声と少し距離を取り、言葉の使い方を変えること。
それだけで、ウェルビーイングの土台は確実に育っていきます。自分の内なる会話を意識的に関わることで、この先ちょっと楽に、人生を過ごすことができるようになるかもしれません。
(参考文献)
・ヴィゴツキー(著)柴田義松(訳)新読書社(2001/09)「新訳版・思考と言語」
・西川大志他(2013/第84巻第5号) 「Inner speech as language process and cognitive tool
・Fernyhough, C., & Borghi, A. M. (2023).
“Inner speech as language process and cognitive tool.” Trends in Cognitive Sciences, 27(12), 1180–1193.
・Oleś, P. K., Brinthaupt, T. M., Dier, R., & Polak, D. (2020).
“Types of Inner Dialogues and Functions of Self-Talk: Comparisons and Implications.” Frontiers in Psychology, 11:227.
・Gainsburg, I., Sowden, W. J., Drake, B., Herold, W., & Kross, E. (2022).
“Distanced self-talk increases rational self-interest.” Scientific Reports, 12:511
