職場での肩書き、家庭でのパパやママという立場。 一日のほとんどが、誰かの期待に応える「役割」だけで埋まってはいませんか。
朝から晩まで役割を演じ続けていると、ふとした瞬間に、自分がどこかに置き去りになっているような、言いようのない寂しさを感じることがあります。 そんなとき、心を整える助けになるのが、重い役割をいったん玄関の外に置いて、素の自分に戻れる「第3の居場所」——サードプレイスかもしれません。
サードプレイスは、単なる気分転換スポットではない?!
サードプレイスとは、家(第1)でも職場(第2)でもない、あなたにとって心地よい場所のことです。 そこは単に「お茶を飲む場所」以上の意味を持っています。 外に出る理由が生まれたり、ゆるいつながりができたり、小さな社会参加の入り口になったり。だからこそ、私たちの孤独感や日々の調子と、実は深く結びついているのです。
データが教えてくれる、孤独感と「つながり」のリアル
内閣府が全国の16歳以上を対象に行った調査(令和6年)※1では、孤独感が「しばしばある・常にある」と答えた人は4.3%でした。 これだけ聞くと少なく感じますが、「時々ある」「たまにある」まで含めると、何らかの孤独感がある人は全体の約4割(39.3%)にものぼります。
つまり、日本人の約10人に4人は、日常のふとした瞬間に孤独を抱えているのです。
また、孤独は高齢者だけの課題と思われがちですが、実は20代(7.4%)や30代(6.0%)の数値が高く、働き盛りの世代にとっても決して無視できないテーマであることが分かっています。
※1 調査対象:全国の16歳以上の男女20,000人を対象とした無作為抽出調査(有効回答10,871人)


興味深いのは、社会活動への参加状況と孤独感の関係です。
何らかの活動に参加している人で孤独感が『しばしばある・常にある』人は2.9%だったのに対し、参加していない人では5.6%と、約2倍の差がありました。 濃い人間関係でなくてもいい。地域の活動や趣味の集まりなど、「外へ出る理由」や「人と交わる機会」があるだけで、孤独の波を穏やかにできる可能性がありそうです。

さらにJAGES(千葉大学ほか)の研究※2では、社会的孤立が健康に与える影響を追跡しています。
孤立の状態にある人は、そうでない人に比べて死亡リスクが1.9倍、認知症のリスクが1.6倍、介護リスクが1.5倍になるなど、さまざまな健康上のリスクとの関連が明らかになりました。
特に「友人との交流」や「社会参加」といった要素が、私たちの心身の健康を守る強力な土台になっていた点は、非常に大きな示唆を含んでいます。
※2 調査詳細:全国の65歳以上の高齢者 34,187人(一部47,318人)を2016年から3年間追跡調査

もちろん「居場所さえあれば全て解決する」という単純な話ではありません。 しかし、家と職場の外に、ふらっと立ち寄れる場を一つ持つことが孤独を防ぎ、日々の調子を整えるための「支え」になり得ることが、国内のデータから見えてきます。
ウェルビーイングな人生のために。ゆるく続く場を、ひとつだけ
ここまで見てきた通り、孤独感は一部の特別な人の話ではありません。 そして、ここで言う「つながり」は、無理に人付き合いを増やす努力とは少し違います。 忙しい私たちが明日から実践できるのは、深い関係を築こうと頑張ることではなく、ただ「そこに行ける場所」を確保すること。役割を降ろして、ゆるいつながりが続くサードプレイスを、生活の中に一つだけ持つことです。
大げさな変化は要りません。 帰宅前に本屋へ寄って、背表紙を眺める。喫茶店でコーヒーを一杯だけ飲む。地元の小さなギャラリーをのぞく。近所の公園を少しだけ歩く。 そんな小さな習慣が、役割をいったん降ろして「素の自分」に戻る時間になります。スマホの通知を気にしない、わずか数分の空白。その「余白」が、明日を乗り切るための柔らかなエネルギーをくれるかもしれません。
サードプレイスは、特別な場所ではなく、今日からつくれる心のよりどころ。 まずは週1回、15分から。あなたが少しだけ機嫌よくいられる場所を、ひとつだけ探してみませんか。
(参考文献)
・内閣府「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和6年人々のつながりに関する基礎調査)」(2025年4月25日 公表)
・一般社団法人 日本老年学的評価研究機構(JAGES)プレスリリース「社会的孤立と健康・Well-beingの関連について」(2023年5月26日 公表)
