ひとり時間は心にいいの?「選べている感覚」が育てるwell-being

ひとり時間は心にいいの?-「選べている感覚」が育てるwell-being

予定が何もない休日の朝は、少しほっとする。そんな瞬間はありませんか。誰にも気を遣わず、好きな時間に起きて、好きなものを食べる。心地よいはずなのに、しばらくすると「ひとりで過ごすのはもったいないかも……」という気持ちがよぎることもあります。

ひとりでいる時間は、心にとってよいものなのでしょうか。それとも、できるだけ誰かと過ごすほうがよいのでしょうか。今回は「ひとり時間」について、少し立ち止まって一緒に眺めてみたいと思います。

ひとり時間のイメージ


ひとり時間はほっとするのに、後ろめたく感じるのはなぜ?

休日に予定を入れないと、少し落ち着かない

手帳やカレンダーが空白のまま週末を迎えると、なんとなくそわそわする。そんな感覚を持つ人は少なくないようです。「予定がある=充実している」という感覚が身についているからなのかもしれません。

一方で実際には、何もしない時間にこそ心が整っていく面もあります。ぼんやりしている間に、考えごとが静かに片づいていくような感覚です。

寂しい人と思われたくない気持ち

ひとりで映画を観る、ひとりでカフェに入る。心地よいのに、周囲の目がふと気になることがあります。「孤独な人だ」「一緒に出かける人がいないのかな」と思われていないだろうか、という小さな心配です。

ひとりでいたい気持ちと、ひとりでいることを不安に思う気持ち。この二つは、同時に存在していても不思議ではありません。

ひとり時間は、よい?よくない?

「ひとりの時間は大切」と言われることもあれば「孤独は健康によくない」と言われることもあります。どちらの話も耳にするので、どう受け止めればいいのか迷ってしまいますよね。

近年の研究によると、ひとり時間は「よい」「悪い」の二択では説明しきれないようです。カギになるのは時間の長さそのものよりも、その時間をどのように過ごし、どう感じているか、という点だと考えられています。

「自分で選んだ時間」かどうかで変わる

2023年、成人178人を対象に21日間、日々のひとりで過ごした時間と人と過ごした時間、そしてその時の気分を記録した日誌研究(毎日の出来事や気持ちを記録して分析する方法)の結果が報告されました。(Weinstein N.・Vuorre V.・Adams M.・Nguyen T.,2023)

その結果として、ひとり時間と人と過ごす時間の「これが最適」という明確な回答は得られませんでした。

ただし、この研究にはひとつ大きな発見がありました。ひとり時間が自分で選んだものであった場合、ひとり時間が長い日に感じがちな孤独感や、生活満足度の低下は弱まる、あるいは見られなくなったと報告されています。

図1. 同じ時間でも「自分で選んだ」か「選べていない」かで意味合いが変わる

また、ひとりで過ごす時間の長さはストレスとも関連しており、全体として見るとひとり時間が多い人が特に孤独や不満を抱えていたわけではないことも紹介されています。つまり、ひとり時間そのものが心を弱らせるのではなく、過ごし方を「選べていない感覚」がストレスにつながりやすい、という見方ができそうです。

年齢によってもひとり時間の感じ方は違う

ひとり時間の感じ方は、年齢や暮らし方によっても変わるようです。年齢が上がると、ひとりで過ごす時間は自然と増えていきます。2023年に報告された高齢期におけるひとり時間に関する研究では、108名の高齢者を対象に14日間、日々のひとり時間の長さ、時間を味わう感覚、抑うつ気分、身体症状が記録されました。(Pauly T.・Wallimann M.・Peleg S.,2023)

その結果、ひとり時間が長い日には抑うつ気分がやや高いと報告されました。一方で、身体症状へ影響するという結果は見られませんでした。

なお、この研究では「その時間を心地よく感じられているか」も測られています。ひとりで過ごす時間の長さだけでなく、その時間をどのように味わっているかにも、ひとり時間の感じ方を左右する要素がありそうです。

同じひとり時間でも、感じ方が違うのはなぜ?

「孤立」と呼ぶか「自分のための時間」と呼ぶか

2024年に報告された研究では、ひとり時間の過ごし方についてその呼び方に注目しました。同じように過ごしてもらう際「me-time(自分のための時間)」と伝えた群と「isolation(孤立)」と伝えた群で感情の変化を比較したのです。(Rodriguez M.・Campbell W.Scott,2024)

ひとり時間を「自分のための時間(me-time)」と呼ぶか「孤立(isolation)」と呼ぶかで感情が変わった研究の比較
図2. Cognition and Emotion Volume 39. (2025) の研究をもとにした概念図

ひとりで過ごす時間の長さや過ごし方は同じでも、その時間をどう捉えるかによって、感じ方が変わる可能性が示されています。言葉は、体験に影響するはたらきを持っているのかもしれません。

ひとり時間は、どう過ごすかでも変わる

2024年に発表されたレビューでは、自分で選んだひとり時間ほど、ウェルビーイングとよいかたちで結びつきやすいことが、一貫して示されていると報告されています。
(Nguyen T.-T・Rodriguez M.,2024)

同時に、ひとり時間の影響は長さや頻度だけでなく、その時間をどう過ごし、どう感じるかによっても変わると整理されています。 何時間ひとりでいたかよりも、その時間をどんなふうに過ごしたか。その違いが、心への影響にも関わってくるということです。

また、2021年の別の報告では、思春期から高齢期まで幅広い年代の人が語る「ひとりの時間」の内容が分析されました。(Weinstein N.・Nguyen T.・Hansen H.,2021)
そこで浮かび上がったのは、ひとりの時間は「自分で選べている感覚(自律性)」と結びついたときに、ウェルビーイングと関連しやすいということです。誰かに命じられたわけでも、仕方なくそうなったわけでもない。その感覚が、同じ時間の意味を変えていくと考えられています。

裏を返せば、ひとりでいることが苦しく感じられるときは、「ひとりだから」ではなく「選べていないと感じているから」かもしれません。

ひとりの時間が、人との時間を心地よくする

ひとりの時間は、気を遣うことから少し離れ、心の緊張をゆるめる時間にもなります。一方で、長く続くと寂しさを感じることもあります。ひとりの時間を大切にすることと、人とのつながりを大切にすることは、対立するものではありません。むしろ、ひとりで整えた時間があるからこそ、人と過ごすときに落ち着いて向き合えることもあります。食事の場面はその分かりやすい例です。誰かと囲む食卓にも、ひとりで静かにとる食事にも、それぞれのよさがあります。

そのときどきの自分に合うバランスを探していく
図3. ひとりの時間とだれかと過ごす時間は、そのときどきの自分に合わせてバランスをとることができる

ひとりの時間と、誰かといる時間。そのときどきの自分に合うバランスを探していくことも、それぞれの時間を心地よく過ごすためのひとつなのかもしれません。

日常の中でつくるひとり時間

● 帰宅後の30分を「休憩」と名づけてみる
仕事から帰って、なんとなくソファに座り、気づけば30分が過ぎている。そんな時間を「ダラダラしてしまった時間」と考えるか「今日の自分の休憩時間」と考えるかで、心への負担が大きく変わることがあります。

先ほどの「ひとり時間」の呼び方の研究を思い出すと、同じ時間の過ごし方でも言葉が感情に影響することがわかります。「これは休むと決めた時間」と自分の中で言葉にしておくだけで、後ろめたさが少し軽くなるかもしれません。

● 家族との暮らしの中で見つける
家族との暮らしの中では、まとまったひとり時間を確保するのは簡単ではありません。子どもが小さければなおさらでしょう。

まとまった時間がなくても、その時間を自分のために使うと決めることはできます。お風呂に入っている10分、洗い物をしている間の数分、子どもが寝たあとの15分。短くても「今は自分の時間にする」と自分で決めれば、その時間の意味は変わり得ます。

「家族といる時間を減らさなければ」と考える必要はありません。すでにある小さな隙間に名前をつけ直すところからでも、十分に始められるのはずです。

日常の中でつくるひとり時間

● ひとりランチとスマホの距離感
ひとりでランチをとるとき、ついスマートフォンを開いてしまう人も多いでしょう。手持ち無沙汰が埋まりますし、さまざまな情報も入ってきます。ただ、その間ずっと誰かの生活や意見に触れ続けているような感覚になることもあります。

もしひとりの時間なのに休まらないと感じることがあるなら、最初の5分だけ画面を伏せて、スマホの情報から離れてみるのもひとつです。もちろん、スマートフォンを見ながらの食事が悪いわけではありません。大切なのはスマホを見るか見ないかではなく「今、どう過ごしたいか」を自分で決められているか、という点です。

● 通勤や散歩で音を消してみる
通勤中はイヤホン、家では動画、寝る前は音楽。気づけば一日中、何かの音に包まれている人も多いかもしれません。音があると安心する一方で、静かな時間をつくると、いつもとは違うことに気づくことがあります。

たとえば駅までの10分間だけイヤホンを外してみる。いつもは気に留めない街の音や、季節の変化に気づくこともあります。音を消す選択肢があると知っておくだけで、ひとり時間の過ごし方に幅が生まれるように思います。

自分で選ぶウェルビーイングな時間

5分でも「自分で選んだ」と思えるように

ひとり時間は、特別な時間を新しくつくる必要はありません。

コーヒーを淹れる3分間。窓の外を眺める5分間。寝る前の5分間。「ここは自分の時間」と心の中で決めるだけで、その時間はあなたのひとり時間に変わっていきます。 
手帳に「ひとり時間」と書き込み予定として並べることで、後ろめたさが少し軽くなるかもしれません。

楽しみ方は人それぞれ

ひとり時間の過ごし方に、正解はありません。料理が合う人もいれば、散歩や読書が合う人もいます。何もしないでいることが一番の休息になる人もいるでしょう。

大切なのは誰かとの過ごし方にこだわることではなく、自分が心地よいと感じられるかどうかです。

「ひとり時間」がいらないと感じる日もあっていい

もちろん、ひとりでいたくない日もあります。それも自然な感覚です。
誰かと話したい日もあれば、誰にも会わずにいたい日もあります。気持ちがはっきりせずモヤモヤするときは、答えを急がずにそのままにおくことができるのも、ひとつの力だと考えられています。

ひとり時間は、増やすべきものでも減らすべきものでもないのかもしれません。今日の自分に必要なのはどちらだろうかと、ときどき問いかけてみる。その小さな確認から、始めてみませんか。

参考文献:
・ Weinstein N.・Vuorre V.・Adams M.・Nguyen T.(2023).
Balance between solitude and socializing: everyday solitude time both benefits and harms well-being. Scientific Reports Article number: 21160(2023).
・ Pauly T.・Wallimann M.・Peleg S.(2023). Everyday solitude, time savoring, well-being, and health in older adulthood. Innov Aging. 2023 Dec 21;7(Suppl 1):554.
・ Rodriguez M.・Campbell W.Scott. (2024). From “isolation” to “me-time”: linguistic shifts enhance solitary experiences. Cognition and Emotion Volume 39, 2025 – Issue 8.
・ Nguyen T.-T・Rodriguez M.(2024). Deconstructing Solitude and Its Links to Well-Being. First published: 05 November 2024.
・ Weinstein N.・Nguyen T.・Hansen H.(2021).
What Time Alone Offers: Narratives of Solitude From Adolescence to Older Adulthood. Frontiers in Psychology Volume 12 – 2021.

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